■キョロちゃんアンプ

某雑誌社の取材のため、シャーシの穴あけから始めて半日で作るはめになってしまったアンプ。
 

 12月半ば、毎日新聞社発行の情報誌AMUSEから「真空管アンプを製作するところを取材をしたい」との連絡をいただいた。

たまたまその翌週の12月23日は手作りアンプの会恒例のコンサート。 自作アンプを世田谷区のお寺に持ちより夜通し鳴らし続けるという、イカレたオジサマたちの集まりである。記者さんにここに来てもらい、コンサートが始まる夕方までの時間を製作に当てることにすれば、ベテランの方々に手助けしてもらいながら1台できるだろう。ついでにコンサートの取材もしてもらえて一石二鳥。

 まずはおもちゃ屋を物色しクリスマス用のお菓子詰め合わせセットをゲット。この缶は上にハンドルがついていないので、真空管を立てるのに最適。おまけに車輪がついてて走る。完成すれば業界(?)初の走る真空管アンプになるはずである。ちょっと小さいのが難ではあるが、わずかな短所など問題ではない。


 前日夜の「手作りアンプの会」メンバーとの綿密かつ大ざっぱな討議の末、シャーシ内の部品配置だけは決定していた。しかし事前のシャーシ加工等は一切せず、土曜日の午前10時過ぎ、ぶっつけ本番の製作が始まった。

 与えられた時間はイベント開始までの約8時間。1人で完成に漕ぎ着けるのは厳しい。幸いシャーシに使った缶はフタと本体を分けることができるのでここからは二手に分かれて作業。

フタにはアンプ回路の部品類とと入出力端などがおさまり、配線材が縦横無尽に走り回る。


身の部分にはこんなふうにトランス類がぎっちりおさまることになる。

 写真の上の左側がヒータートランス、右がB電源用のトランスである。下側には出力トランスが4つ(片チャンネル2個)窮屈そうにおさまっている。

この本体部分の底の方にはシャフトが2本通っている。言うまでもなく左右の車輪を繋いでいるものだ。今回はこのシャーシの特徴である「はしる」という機能を温存することが至上命令なので、トランスに下駄を履かせたりという涙ぐましい努力をしている。



 先に増幅回路が出来上がっても、電源がなければアンプの動作試験はできない。しかも電源を作るのってはっきし言ってあんまり楽しくない。だから普通はまず電源部から製作をはじめる。電源部にとりかかったところで、とら猫師匠がアンプ部の穴あけを名乗り出てくれた。 しかし一度手をつけてしまうとなかなか手分けしてというわけにいかない。 けっきょく電源部以外はほとんどとら猫さん一人に製作してもらうことになってしまった......。

 おまけにこの回路図を書いたのもとら猫さん。>謝々






 トランスはいつもの東栄変成器製を使用。 最近は店頭で「J-633 を1つと.....」と言いかけただけで、店の兄ちゃんが「....とZT03ESを1個とT−850を4つね」と言いながら店の奥から出してくれるという、もはや定番となったこのセット。いや、別にセットで売ってるわけじゃないんだけどね。

他のトランスがウィークデーに売れるのに対して、このセットは週末、特に連休前に大量に出るという。うーん、ずいぶん商売のお手伝いをしてしまったかも知れない。今度のイベントは東栄さんにスポンサーになっていただこう。

 トランスと真空管以外の部品は東京に行く前に名古屋で揃えた。真空管は秋葉原のアンディクスオーディオで1本250円。